(要約)
B子は、えらが少し張っていることを気にしていた。
周りの人にいろいろ言われたこともあったから。自分では“個性”より“欠点”として感じていた。
そんな B子の変化のきっかけになったのが、未来の自分である ビーネエ、そしてビーネエの友達である タトゥーの子との出会い。
タトゥーの子は、自分のタトゥーが理由で偏見を受けた経験があり、
「見た目の特徴は、隠すものじゃなくて生き方の一部だよ」と B子に伝える。ビーネエもまた、「えらはあなたの輪郭であって、あなたの物語の一部だよ」と優しく背中を押す。
B子は初めて、自分のえらを“嫌う理由”ではなく“自分らしさのひとつ”として受け止められるようになった。

(物語の始まり)
びーねえは、未来の私——らしい。
どうして未来の私がそばにいるのか、
私自身まだよくわかっていない。

でも、気づいたらいつも近くにいて、
私より少し大人の世界を知っている存在。
二十五歳の私で、
モデルの仕事をしている。

撮影の現場には、
いろんな人が集まる。
年齢も、生き方も、
それぞれ違う世界を歩いてきた人たち。

その中に、
びーねえがよく一緒にいる女の子がいる。
少し大人っぽくて、
自分の体にタトゥーを入れているモデルさん。

私——高校生のB子とは年齢も立場も違うけれど、びーねえを通じて何度か会ううちに、
なんとなく気が合うようになった。

その子は、私がえらのことで悩んでいるのをそっと気づいてくれていた。

ある日の撮影の帰り道、その子がぽつりと話してくれた。

「私ね、タトゥーを入れただけで叩かれたことがあるんだ」
モデルって人に見られる仕事だから仕事もタトゥーが影響してだめになったことがある。
オーディション要項に「タトゥー不可」と明記されるケースもあるんだ。

その声は静かで、でも少しだけ痛みが混じっていた。

「人ってさ、自分と違うものを怖がるよね。みんなと同じだと安心するから、
ちょっと違うだけで“変だ”って言われちゃう」

私は黙って聞いていた。

それにね、最近よく思うんだ。
人って、自分とちがうものを怖がるよね。みんなと同じだと安心するから、学校でも、仕事でも、
「同じであること」が正しいみたいに扱われる。

でも、生きものって本当はもっとバラバラなんだよね。
ゴリラとピグミーマーモセットなんて、
同じ“猿”って呼ばれてるのに、
大きさも顔も全然ちがう。

人間だけが、肌の色が少し違うくらいで、体のつくりはほとんど同じ。
多様性が少ないって、生き物としては本当は致命的なのに、
頭という武器でそれを乗り越えてきた。

だから、えらがあるとか、
あざがあるとか、
タトゥーを入れるとか、
そういう“ちょっとした違い”が炎上したりする。

私の大好きな有名な女性歌手がタトゥーを入れただけで叩かれる世界。
なんだか、少し息苦しいよね。
その歌手の子、最近見た歌番組ではなんか元気なかったように感じたのは私だけかな?
思わず、負けないで!今はちょっと声の大きな人の声だけが聞こえているだけ…。
たくさんのファンはあなたの味方だから。そう心の中で叫んだよ。

その子は、ふと私の横顔を見て言った。
もちろん、生まれながらのものと好きで入れたものとは人の反応しは同じだったとしても。
抱える辛さや憤りもぜんぜん違うよね。
私は望んで入れたから何を言われても平気。なにくそーって言って頑張れる。
でも、望むとか望まないとかに関係なく…他人にはなくて自分にあるって…
しかもそれを否定されたら、辛いよね。苦しいよね。
でも、私、信じているんだ。人はみんな同じじゃなくて少しずつ違う。
その違いを理解し、愛せる人が今は少数でもきっとそれが大多数になる日がくるって。
だから、B子ちゃんが「これも私の個性なんだ」って言える日がきっとくるって信じているよ。

そう言うとB子のえらをじっと見つめながら聞いてきた。
「ねえ、B子。見られるのが辛いならなんでえらを髪の毛で隠さないの?」

少しだけ胸がぎゅっとした。
鏡の前で何度も悩んだこと。

B子は少しだけ考えて、
鏡の中の自分を思い出しながら言った。
私のえらも、
きっと誰かにとっては“ちがうもの”なんだろうけど、
私にとっては、生まれた意味の一部なんだ。

受け継いできたものを、
ちゃんと抱えて生きていきたいから。

えらを隠すってことは大切な愛しているママや家族やたくさんの仲間達を裏切ることになる。
そんなことはできないよ。

その子は驚いたように目を丸くして、そっと私のえらのあたりに触れた。

「……私には、とってもかわいく見えるよ」

そう言って、やわらかく微笑んだ。

私は少し照れて、その言葉を胸の奥にしまった。

「私のお友達になってください」

その答えが、そっと返ってきた気がした。

未来の私が連れてきたひとりの女の子。

✦ あとがき(HP用)
この物語は、noteで先に公開したオリジナル作品です。
B子ファミリーの世界観に深く関わるため、
HPでは“追加エピソード”として掲載しています。

HPでは、noteではまだ公開していない
“深い物語”も随時追加しています。
よかったら、世界観の奥まで覗いてみてください。